フェラーリ599です。リアウィンドウをよく見ると、上部にはコーンズのステッカー、下部にはフェラーリジャパンのステッカーがあります。正直なところ、フェラーリジャパンステッカーのほうに何となく物珍しさを覚えます。フェラーリジャパンが設立されたのは2008年のことで、まだ私が車に何一つ関心がない時期のことです。車に興味を持ち始めた頃には既にフェラーリジャパンが存在していたにもかかわらず、コーンズ以外のステッカーは珍しく思ってしまいます。
2008年にフェラーリジャパンが設立される以前は、フェラーリの輸入権を持っていたのはコーンズで、コーンズが国内総代理店でした。清水草一氏の「クルマの女王・フェラーリが見たニッポン」によると、1971年に西武自動車がフェラーリの輸入権を獲得。翌年4月にコーンズがフェラーリと交渉するものの、さすがに昨日の今日で輸入権を移動させるわけにはいかなかったようです。その西武自動車はすぐにフェラーリから撤退し、安宅産業の子会社ロイヤルモータースが後を継いだものの、こちらもほどなくして撤退。こうして1976年にようやくコーンズが輸入権を獲得することになりました。他社と違ってすぐに放り出すでもなく、実に30年以上もの長きにわたり日本にフェラーリを、そしておそらくはスーパーカー文化を導入し続けました。しかし、フェラーリジャパン設立にともなって輸入権はコーンズの手を離れ、コーンズは総代理店から一代理店へと立場が変わっています。伝え聞くところによると、今回と相似形の構図であるメルセデスベンツ日本設立時には、それまでの代理店だったヤナセと本国メルセデスとで相当に揉めたようです。フェラーリとコーンズとの間にはそのような悶着はなかったようで、それは物事の進め方や仁義の切り方、そして現地法人が直営店を持つ持たないの違いもあるのかもしれません。フェラーリジャパンとコーンズは輸入権移管について6年間も話し合って進めており、しかもフェラーリジャパンは直営店舗を持たないので、ヤナセとは別次元の穏やかさとも言えます。
さて、話のダシに使ってしまったヤナセですが、険悪な経緯を辿ったにも関わらず、日本国内で販売されるベンツの六割は依然としてヤナセ経由です。さすがヤナセと言うべきか、あるいは険悪な経緯を辿った「から」こその数字と言うべきか、ともかくまだまだベンツといえばヤナセです。ツイッターを見ていると、ヤナセがベンツ以外のたとえばBMWを扱っていることを知らない方をたまに見かけます。さらに、ヤナセとベンツを同義語としてつぶやいている方もいます。ヤナセにベンツのイメージが強すぎるためですが、私がコーンズに抱くイメージも似たようなものかもしれません。もっとも、私はフェラーリといえばコーンズというイメージではなく、超高級車といえばコーンズしかない、とのイメージを抱いているので、いっそう偏った見方かもしれませんが。
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