キャデラックのDTSです。この四本出しマフラーの源流にはV8エンジンが構えていますが、そのパワーは意外や300馬力にも届いていません。これがキャデラック以外であれば「300馬力すら持ち合わせていないのに四本出しかー」と引っかかりが生じそうですが、ことアメ車に限っては大らかさが感じられて「だがそれが良い」となってしまいます。実際、この四本出しの形状にスポーツカーっぽさも力みもなく、小さなことにはこだわらない鷹揚な印象を受けます。
自動車業界に限った話ではないですが、黎明期に活躍した会社は必ずどこかで繋がっていてとても面白いです。かのヘンリー・フォードが立ち上げたヘンリー・フォード・カンパニーは、ヘンリー・フォード自身が物別れで社を去ってしまったので会社は清算手続きに入ります。1902年のことです。残された工場や設備の鑑定を依頼された技術者リーランドは、清算せずに工場を続けるべきだと主張し、リーランド自身がその代表に就任します。社名もヘンリー・フォード・カンパニーからキャデラックへ変更されますが、社名に付けられた「キャデラック」は創業メンバーでも何でもなく、ただデトロイトを開拓したフランス貴族の名前でした。その後、キャデラックはフォードではなくGMグループ入りして今にいたるわけですが、キャデラックを立ち上げた当のリーランドはキャデラックを去って何とリンカーンを立ち上げます。そのリンカーンはGMではなくフォードに買収されて今にいたり、高級車部門でキャデラックとしのぎを削っているわけです。
こうして歴史を紐解くと、もとを辿ればそれぞれ偉大な仲間同士、アメリカを支えた大動脈同士です。互いにアメリカを背負ってきたという自負もあるのでしょう。アメリカの自動車業界から時おり感じる大メーカー同士の一体感もわかる気がします。
この記事へのコメントはありません。