カールソンのE-CK55RSステーションワゴンです。E55AMGステーションワゴンがベースの555馬力を誇るモンスターワゴンですが、W211型E55AMGのコンプリートカーとしては、カールソン本国ではセダンしか設定がありませんでした。では、このワゴンはなんちゃってコンプリートカーなのかとなるとそうでもなく、完成時にはカールソンジャパンからコンプリートカーの認定を受けている、ワンオフ製作の特注車となります。「完成時には」と留保をつけたのは、どうも完成後さらに他社のパーツを装着したようで、現在もカールソンとしてコンプリートカーの認定があるのかとなるとわからないためです。ただ、特別な一台であることに違いありません。左下の”YBI”をアクセントに雑誌やWebメディア等へも露出があったようなので、私などより詳しい方もたくさんいらっしゃるかと思います。
ワゴンなのでセダンと共通パーツとして使えない部分もあり、ワゴン用パーツを特注でカールソンに作ってもらったという筋金入りのワンオフ車両ですが、完成当初は545馬力でした。その後、何らかの補強で10馬力を上乗せしているようで、「なぜそこまで?」と思ってしまいます。E-CK55RSセダンが568馬力なのでそれを目指したのかもしれませんし、476馬力あったノーマルのE55AMGとは別世界が見えてしまって更に追求したくなったのかもしれません。W211型AMGが55から63になったのは2006年なので、当時のパワーウォーズを考えれば545馬力でも充分以上の有り余るパワーです。そのような領域を日常的に味わった経験がない私としては、さらに上を目指す意識についてはただ想像する他ありません。
ところで、最近エンジンチューンについてこれまでの常識(というか思い込み)を覆されることがありました。私が普段お世話になっているBMWディーラーの場合は、G-PowerタイフーンX5Mのようにエンジンいじって700馬力みたいな車両は入庫お断りとなっています。以前も記事で書きましたが、たとえば四駆の場合はトランスファーごとに強度が違っていて、受け止められるトルクにも上限となる許容値があります。ミッションも然りです。むやみにエンジンだけ出力アップさせた車両など責任が持てませんし、たとえ出力に見合った補強がされていると言われても、その補強内容を確認しようがなくやはり責任が持てないので入庫拒否とのことでした。しかし、別のディーラーの方は、「エンジン自体は何馬力に出力アップされていようが、それ自体は特に問題ありません。そのチューニングに付随するエラーはオーナー様の自己責任という範囲内でメンテナンス可能です。それよりも、国交省指定工場であるため、タイヤがはみ出しているほうが問題です」と、カーセンサーに出ているG-Powerを一緒に見ながら話してくれました。カールソンはトップレンジのモデルばかりチューニングしているわけではなく、1.6リッター四気筒エンジンのECU書き換えもおこなうなど非常に手広いので、これが日本全国のベンツディーラーで入庫拒否となると大変だろうなと思いながら、ふと思い出した一件です。もっとも、BMWの場合は正規ディーラーと一口に言っても地域ごとに資本系列がバラバラなので、対応にも濃淡が出やすくなっています。「ヤナセかシュテルンか」で収まってしまうベンツとは事情が違うのかもしれません。
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