メルセデス・ベンツの新型Cクラスです。W205型のC200となります。まだ一部のジャーナリストやお得意様くらいにしか納車されていないはずなので、こちらは試乗中の一台かと思われます。この新型Cクラスについては各種雑誌を通じてその高評価ぶりに接しているので、試乗どころか実車を見たこともない状態ですでに高い評価を抱いていました。しかも、既に数ヶ月ほど前から抱いています。たとえば、モーターマガジンの今年三月号では新型Cクラスは次のように評されています。「今までこのセグメントでは、Cクラスは挑戦者の立場にあった。いや、絶対王者として君臨するBMW3シリーズに対抗できる何かを持っていたかという意味では、実際に挑戦権を得たのは現行モデルが初めてだったとも言えるかもしれない。しかし、新型Cクラスはついに、本気で3シリーズを駆逐し得る内容を身につけての登場となった。これはまさしく事件である。いよいよこのクラスでも王座を奪い取ろうという気迫が前身から漲っている」。どの雑誌も大体このような論調だったので、もうすっかり予断と偏見が刷り込まれています。なんてことだけを書くとただバイアスに流されていますというだけの告白になるのですが、実際に装備面や素材からも志の高さは垣間見えます。もちろん、バイアスの上での判断ですが。
そんな高評価の論調にあって特に気になっていたのが、「ベビーSクラス」という表現でした。遠目にSクラスに見えたという類の言い方は、非常に気になるところでした。「遠くから見て本当にSクラスと間違えたらどうしよう」だとか「W222は毎日二、三台は見かけてるのに、これで新型Cクラスを見てSと間違えたら車好きの末席にもいられない」などと不安がよぎります。しかし、実際にこの新型Cクラスが視界に入ってSクラスと見間違うこともなければ、Sクラスっぽいと感じることもありませんでした。車のデザインにサイズ感が及ぼす影響ってのは小さくないんだなと思い知った次第です。デザイン面でベビーSクラスと言われるとまるでSクラスから引き算的にまとめ上げられたかのようですが、CクラスはCクラスでちゃんと別個に成立しているデザインだと思います。このCクラスとSクラスの後ろ姿写真をPC上で見比べると似ていますが、実車でそう感じることがないのはサイズに合わせてうまくデフォルメされてるせいかもしれません。
名車の小スケールミニカーを製作する人たちは、実車の3Dデータを取り込んでそれをそのまま1/43や1/18などに縮小しただけでは完成としません。実車をただ正確に小さくしただけではミニカーとして何の魅力もない製品に仕上がるからです。「サイズに見合ったデフォルメ」が必ず必要になり、ちょっと実車よりロングノーズを強調するであるとか、リアの傾斜角を強調するであるとかの脚色が加えられ、実車と正確に整合性がとれるような縮尺比率はあり得ないとのこと。つまり、仮に1/87として非常に精緻な出来映えのミニカーを87倍に拡大して実寸大に戻してしまうと、へんちくりんな車になるそうです。実車をそのまま小さくすると変に見える理由は見る側の視点位置の違いとされており、確かにミニカーと違って実車を真上方向から自由自在に眺めることなどありません。ミニカーの話で新型Cクラスをまとめるのも強引ですが、CクラスはSクラスをデフォルメした点もあるでしょうが、それでも全く別個のデザインを生み出していると思っています。そして、今回この新型Cクラスを見て、W222のSクラスは実にサイズを活かしたデザインだったんだなと再認識もしました。
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