【ローバー623SLi】【おかえり!】


 ローバーの623SLiです。自動車メーカー名を聞いて何を真っ先に思い浮かべるかは、もちろん思い浮かべる人の世代にも大きく左右されます。ただ、ローバーはその世代間の振幅が他メーカーよりも大きいのかなと思っています。ローバー・ミニやランドローバーのほうが頭を過ぎる人もいるはずですし、ホンダ提携時代やオースチンを思い浮かべた人もいるかもしれません。私は当初は「イギリス車っぽいのどかなデザインをしてるなー」という漠とした印象を抱いていましたが、その複雑な歴史を知るともう過渡期に次ぐ過渡期に見舞われた大変なメーカーという印象が頭から離れません。具体的なモデル名よりも、物凄く複雑に入り組んでいる社史全体の印象が頭に浮かびます。ローバーの歴史は英国自動車産業の歴史と言ってもいいほど、英国自動車産業の全体像を抜きにその社史を語れないのではないかとすら感じます。そんな非常にダイナミックな歴史を背負っているローバーですが、特にBMW傘下になる可能性が出てきた時期を見ると、英国の経済状況も垣間見えて興味深いです。
 BMWがローバーを買収する際、BMWは英国貿易産業省と商務省の認可を得る必要がありました。その認可に必要な大条件の一つとして、「ローバー従業員3万3千人の雇用を全て確保すること」も含まれていました。BMWはそれを飲みました。さらに、ローバー元社長のジョン・タワーズとの契約では、「ローバーという会社が存続している限り、労働組合に加入している従業員には一生涯の雇用を約束する」ことになりました。今の基準で判断するなら少し違和感がある内容ですが、英国には当時(今でも)ドイツ嫌いな層が確実に存在していたので、BMW側としては慎重に交渉を進めたかったようです。第二次大戦でBMWのエンジンを搭載した戦闘機がロンドンを空爆していることもあって、それをなぞらえた風刺画もドイツ嫌いには受けたようで。この交渉がおこなわれていたのは1994年のことですが、条件を飲みつつ交渉がまとまっていく数ヶ月の間になんと、ローバーの従業員は4,000人も増えてしまいました。BMW側からローバー従業員の解雇ゼロという保証を引き出せたため、一気に膨れ上がったわけです。これも今の価値判断では理解に困る現象ですが、当時の英国自動車業界がどれほど過渡期にあったかを象徴する出来事でもあります。私はこのダイナミックな一事だけを見ても、「ローバーって面白いな!」と思ってしまいます。
 さて、画像のローバー600はBMW時代ではなくホンダと提携していた時代の一台なのですが、プラットフォームはアコードのもので、エンジンもホンダから提供されています。つまり、英国車なのに故郷を走っているとも言えるわけです。これはもう「おかえり!」と言わざるを得ません。んー、やっぱりローバーは面白い!

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