マットブラックのポルシェ928GTSです。これが928だとはすぐにわかりませんでした。まずもって、ノーマルの928GTSでは見られないロー&ワイドのワイド感です。オーバーフェンダーのおかげで、まるで別の車であるかのように仕立て上げられています。ロングストレッチバージョンならぬワイドストレッチバージョンでしょうか。そして、おそらくはラッピングと思われるマットブラック外装も、追い打ちのアクセントになっています。さらに、最もポルシェであることを想起させなかった要素が、その「音」でした。
この黒い塊とともに響いてきたのは、まるっきりシェルビーコブラのサウンドでした。おおよそ私が知っているポルシェの音ではありません。熱海ヒストリカG.P.で疾走したコブラの「ドッドッドッドッ」という地響きさながらの音を響かせており、アメ車の音ではなく、コブラの音、そう言ったほうが伝わりやすいかと思います。私は普段からマフラーが何本だの四の五の書いているのですが、この928GTSにはマフラーが見当たりませんでした。音とマフラーなんてほとんど関係ないのではなかろうかと自己否定したくなるような、野太く濃い音です。さらに、ホイールのリムは赤色だったので、足元に見事な差し色といった体でしょうか。見事な一台です。
ところで、このポルシェ928は高級GTカーとして開発されたらしく、ポルシェには珍しいV8エンジン搭載のFR駆動となっています。V8エンジン搭載モデルはこの後カイエンに引き継がれましたが、この928は911に比べればまだ4人乗れそうでもありますので、V8FRの4人乗りということで、パナメーラの遠いご先祖様とも言えるかもしれません。ポルシェがこの先FFレイアウトを採用することはまずないとは思いますが、FRの拡充はあり得るのかなとも思っています。マカンのFRバージョンです。そうやってFRが増えていくと、またこの928が見直される機会が増えるのでしょう。街で見る機会が少ない928ですが、色んなポルシェのご先祖様と考えると、また眺め甲斐が増す一台です。
この記事へのコメントはありません。