ロールスロイスのファントム5です。このファントム5をほんの少し見ているだけで、今の時代の車とは異なる素性が伝わってきます。新しい車ばかりが目に入っている日々なので、逆説的にこの車の違いが感じられるのかもしれません。画像は首都高速での一枚ですが、目地段差での衝撃や振動の類がファントム5の鷹揚なシャシーとボディ全体で包み込まれて霧消したかのような、「何も起こってない感」が姿を現していました。ロールスロイスを語る文脈でしか登場しない”waftability(ワフタビリティ、浮遊感)”と呼ばれる概念は、もちろん現行ロールスロイス各車にも垣間見えます。目地段差での「何も起こってない感」もこのワフタビリティの一端だとは思います。私がひょんなことから後席試乗することになったゴーストでも同じ具合でした。ただ、ゴーストの場合はBMWが持つ最新テクノロジーを駆使して、いわば逆位相で振動を消し去っているかのようでもありました。一見すると同じ「何も起こってない感」で同じ鷹揚さであっても、裏舞台で繰り広げられている素性がちょっと違う気がします。といっても、ファントム5は見ていただけで、実際に乗ったことなどないので確かなことはわかりません。
また、同時にこのファントム5のサイズも気になりました。生産は1959年から1968年で、サイズを調べるとざっくり全長6メートル全幅2メートル高さ175cmとなっています。どうりで今見ても大きく感じたはずです。日本車が今よりもっと小さかった60年代に、これほど大きな車が、車の向こうに英国を漂わせながら走っていたわけですから、このクラスの輸入車に向けられる人々の視線や意識はいかほどだったのでしょうか。想像が追いつきません。
ちなみに、画像のファントム5は三連テールランプになっていますが、この意匠は今で言うオプションで、当時はちょっとした特注デザインだったそうです。このテールランプについてはインターネットで画像を探しても出てこなかったので、長らく保留画像としていました。しかし、偶然にもロールスロイス/ベントレーの生き字引のような方にお話を伺う機会があり、画像を見てもらったら即答で解決した次第です。やはりこの時代の情報をネットだけで調べるには限界があります。この時代の情報を探すために仮にネット上を5時間さまようくらいなら、往復4時間55分をかけて実際にたとえばロールスロイス/ベントレーを大量に所有し運転しメンテナンスしている方に直接会って話を5分頂戴するほうが、間違いなくずっと濃いものが得られるはずです。検索30分くらいで諦めて保留にした私が言うのも何ですが、やはり実際に所有している方の知見は全く別物でした。
この記事へのコメントはありません。